フリースクール勤務時代に出会った、とある男の子がいます。
私が勤務を始めていちばん最初に出会った子でした。
当時彼は中学2年生。事前に聞いた情報によると、家庭環境も厳しく、中学校は最初の頃少し通った程度であとはずっと不登校。
小学校も実はまともに通っていないとか・・・。
なかなか手ごわそうな相手だな、と思いながら初対面の時を迎えました。そして予想通り、挨拶をした私に対して、
今風に言うなら塩対応とでもいうのでしょうか、ひと言も口をきいてくれずそっぽを向かれました。
・・・今後この彼とうまく関係を築いていけるのだろうか・・・内心とっても不安だった私でしたが、
その後のフリースクールの日々で、否定せずに話を聞き、基本的には全肯定で受容する姿勢で接していた事が良かったのか、
結果的にその彼とは自分でも驚くほど親しい間柄となったのでした。
そんな彼も中学校を卒業し、新しい学校へと進学しました。
そして彼がフリースクールを卒業した数か月後、私はフリースクール勤務を辞める事になりました。
その後の彼の様子は何も分かりませんが、たまにフリースクールには遊びに来ているようでした。
そんなある日、通勤途中の道で彼の姿を偶然見かけるようになりました。
私の通勤路上に彼の学校はあります。
久しぶりに見た彼は友達と楽しそうに話をしながら歩いていました。
彼の自宅から学校まではかなり遠いだろうに、友達と歩いて通学しているようでした。
車やバスなどではなく、自分の足で歩いて、自力で通っている・・・そのことにも非常に驚きました。
ある日は自転車で通学し、またある日は傘もささずに、小雨に打たれながら渋ーい顔をして歩いている・・・。
そんな彼の様子を、私は万感胸に迫る思いで見ていました。
なぜならば私が彼と出会った当初は、本当に頼りなさげで、どこか心許なく、脆くも崩れ去ってしまいそうなほどの
あやうさすら感じられた子でした。
しかし今私が目にしている彼は、その当時の姿など微塵たりとも感じられず、ちょっと大人びて、頼りがいもありそうな、
立派な青年そのものです。つい数年前まではあんなに幼なかったのに・・・。
たったの数年で人はこんなにも変われるのか・・・と心の底から感激しました。
正直に言うと(大変失礼ながら)フリースクールに在籍していた当時の彼の様子から、
とても再び学校に通えるようになるとは思えない事もしばしばでした。仮に通ったとしても卒業までもつのか・・・。
しかし今彼が立派に成長した姿を見るにつけ、フリースクールで彼が先生たちや周りの友人たちから受け取ったものは
間違っていない、そう確信を抱かせてくれました。
彼は私にとって、とても印象に残っている子ですが、ますます忘れられない存在となりました。